子どもを連れて海外に出るのが、怖いですか?教育移住を迷っている親たちへ。
「行きたくない」
スペインのインターナショナルスクールに通い始めた最初の一週間、息子は毎朝そう言った。
起きてから家を出るまで、何度も。
息子をこっちに連れてきたのは、小学校に上がる前だった。
学校を決めるまで、日本人学校も含めて、いくつか見て回った。
英語は話せない。
もちろんスペイン語も話せない。
その状態で、言葉の通じない教室に入っていく。
かわいそうだった。
連れてきたのは、僕だ。
正直に言えば、僕のほうが怖かった。
この子は、ここでやっていけるのか。
このまま、ずっと「帰りたい」と言い続けるんじゃないか。
夜、暗い部屋で、何度もそう考えた。
ある日、息子が泣きながら言った。
「日本に帰りたい」
「ここでは、言いたいことが言葉にできない」
友達に何か伝えたくても、出てこない。
わかってほしいのに、わかってもらえない。
うまくいかなくて、いじめられたこともあった。
僕にできることは、多くなかった。
同じ高さにしゃがんで、話を聞いた。
口をはさまないで、終わるまで。
抱きしめて、ととはいつも一緒にいるよ、と伝えた。
それくらいしか、できなかった。
一か月を過ぎたあたりから、少しずつ様子が変わった。
親友ができた。
言葉がわからないまま、一緒に走り回っていた。
遊んでいるうちに、言葉のほうがあとからついてきた。
2年生、3年生になる頃には、僕よりずっと話せるようになっていた。
今年で、丸4年になる。
日本に一時帰国すると、少し忘れて戻ってくる。
語彙はまだ足りないし、今も勉強は続けている。
それでも、まわりの話はもうだいたいわかっている。
あの頃、一番おびえていたのは、たぶん僕のほうだった。
子どもは、親が思っているより強い。
溶け込むのも、親よりずっと早い。
どうにか、ちゃんと生きていく。
ただ、ひとりでそうなったわけではないとも思っている。
言いたいことを言葉にできない時期に、横で聞いてくれる人がいたかどうか。
そこだけは、親にしかできなかった気がする。
教育移住や海外移住を考えて、同じように不安になっている親は、きっとたくさんいる。
僕もそうだった。
やっていけるかどうか、本当にわからなかった。
うちの話が、少しでも参考になればと思う。
次は、国によって違う教育の考え方について、僕なりに書いてみたいと思う。
この前、学校の前で、息子が友達と何か言い合って笑っていた。
何の話かは、僕にはもう半分しかわからなかった。
